院長からのメッセージ
- 「いたわりの心」で患者様とご家族を
幸せにする医療を目指しています -
院長 町 多賀雄
鹿児島県・与論島出身。九州大学医学部を卒業後、さまざまな医療機関で研鑽を積み、原三信病院(福岡市博多区)脳外科及び救急部長として勤務したのちに、浜の町病院(福岡市中央区)に移籍。2007年に副院長として東福岡和仁会病院に着任し、2009年に院長に就任した。病院経営のみならず外来・病棟での診察も担当している。
ロケット技師を諦めて医学の道へ
もともと私はロケット技師になることを希望していました。いつかは自分が作ったロケットが宇宙へ飛び立つことを夢見ていましたが、進路を決めなくてはならない時にNASAが外国人技師を雇うのを中止。まわりから医者になることを勧められて医学部に入学しました。医師として完全燃焼することが自分に課せられた使命
急性期病院に入院しても病床の回転率を上げるために病気が治りきっていないうちに退院させるケースが問題視されています。慢性期病院に移っても急性期病院並みの医療が求められるため、院長と言う立場でありながら入院・外来問わず誰よりも多く診察を行っています。最近、私が医学生の時に書いた文を目にする機会がありました。それには「燃やせよ燃やせ、命(ぬち)の火を。生ある限り爪の先まで」と記されていました。まるで若き日の自分が、今の自分に送ったメッセージのように感じました。医師として晩年を迎え「完全燃焼して生きていきたい」と、使命をまっとうする決心を固めています。
地域から高齢者の実情に基づいたデータを発信
世界中で高齢化が進行しています。日本はいち早く高齢化社会に突入しており、高齢者医療に携わっている私たちは最先端の高齢者医療を行っているという自負があります。テキストと実際の臨床結果を比較すると、情報が乖離していることが分かりました。テキストでは65歳以下をサンプルとしていますが、それ以上の年齢の場合では、まったく違うデータになるため適切な治療が行えません。私たちが地道にデータを蓄積することで適切な医療が実現できるとともに、高齢者の医療費負担が軽減できるのではないかと考え、2年に一度のペースでデータを検証しています。
「終末医療とは何をすべきか」若い看護師から教わる
当院のドクターたちは、それぞれの専門性を発揮しながら診察にあたっていますし、スタッフたちも他の病院で多様なキャリアを重ねた人が多く、患者様やご家族に対してはもちろん、スタッフ同士もお互いに思いやりを持って接しています。私が若い看護師から学ぶこともたくさんあります。昔の話になりますが、長期療養していた患者様に対して若い看護師が死期を悟り、ご本人と相談してご家族に対する遺書を残していたことがありました。遺書には自分の人生の振り返りと、ご家族に対する感謝の気持ちが綴られており、故人の思いに触れたご家族が、とても感激していた姿が心に残っています。
それまで私は急性期病院で人の死を見送っていましたが、自分の死を受け入れなくてはならない患者様の気持ちや、それに寄り添う看護師の優しさや強さ、残されたご家族の気持ちに衝撃を受けました。患者様は治療を行うことで当初の余命宣告よりも長らく生きることができましたが、わずかな時間を気持ちの整理や、ご家族への感謝の気持ちに当てられていたのだと思います。終末期医療は何もしない医療と思われがちですが、終末までをどのように過ごすのかが求められていることを、患者様やご家族、若い看護師から教えていただきました。